円を描くように Like drawing a circle

  今年の夏は作曲家グリーグの家トロールハウゲンで仕事をしています。以前にも書きましたが、グリーグはノルウェーの民謡のメロディーを自身の作品に使っています。晩年の作品Op.72ではKnut Dahleのレパートリーがピアノ曲になりました。 私はハーディングフェーレを始める前からグリーグのOp.72について調べていました。これまで何度もそこからのレパートリーを演奏する機会があったにも関わらず、私は案外、グリーグのことを知りませんでした。少しづつ、グリーグと民俗音楽家との関わり、どんなレパートリーを使ったのか、また、その素材となっている曲の”現在”などを調べ始めるととても面白く、まだまだ興味はつきません。それに加えて、グリーグのハーモニーの付け方は、全く古臭くなく洒落ていて、改めてグリーグを聞き直し、見直す機会となりました。 というわけで、何年も経ってからまたグリーグに立ち返っています。5月から9月の毎日、トロールハウゲンではピアノコンサートを行なっています。昨日のピアニストは、グリーグのライフワークとも言える叙情小品集の最初の作品アリエッタ(op.12)と最後の作品、余韻(op.71)を取り上げ「まるで円を描くように仕上げた」と紹介しました。(グリーグは34年かけて、10集66曲に及ぶピアノ小曲集「叙情小品集」を発表した)34年の年月を経て、最初と最後に同じモチーフを扱いながら、別の趣の2曲を作曲したのです。私もまた円を描くように、以前と同じ作品を別の知識と観点で見直して行きたいと思います。 明日はトロールハウゲンのスペシャルセッション「My Favorite」でクヌート・ダーレKnut Dahleについて語ります。面白いのは、急ぎ足の観光客もいれば、のんびりと時間を過ごして行かれる人もいることです。話好きの各国語ガイドが夏のシーズン中は常時待機しています。ベルゲンにお越しの際には、ぜひ、トロールハウゲンに足を伸ばしてください。 I'm working at Troldhaugen, the home for Edvard and Nina Grieg, in this summer. I have been interested in Grieg's op.72 slåtter, even before I started playing the hardingfele by myself. But I think, I was not so keen to learn about Edvard Grieg's life and music …

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Grieg minutt for minutt

先日の6月15日、私の住むベルゲンでは大変有名な作曲家、エドヴァルド・グリーグの175回目の誕生日を祝うイベントが開かれました。毎年、グリーグの家、トロールハウゲンでは6月15日を祝うのですが、今年は一大イベントとして、彼の作品番号のついて発表された全作品を30時間かけて演奏するという企画を国営放送のNRKと協力して敢行したのです。その名もGrieg minutt for minutt 。Minutt for Mimutt(分刻み)というドキュメンタリー番組のシリーズは実はNRKでは人気のあるシリーズの一つで、例えばベルゲン鉄道をオスローベルゲン間、先頭車両にテレビカメラを積んで7-8時間、景色を映し続ける、というようなことをやっているシリーズです。 さて、Grieg minutt for minuttでは6月15日の夕方5時半からノンストップでコンサートを中継しました。(もちろん公開録画です)会場になったのはトロールハウゲンのコンサートホール、グリーグが実際に住んでいた家の居間、ベルゲン中心地のグリーグホール、国営放送NRKのオスロのスタジオ、その他、合間にはノルウェー、世界各地からお祝いのメッセージを伝えるというものでした。私もベルゲンに住む者として、このイベントに一部参加させてもらえる機会を得て光栄でした。 30時間の様子は今でもインターネット上で見ることができます。少し編集されて、作品番号ごとに整理されているので見やすいかと思いますので興味のある方はどうぞ。 https://tv.nrk.no/serie/grieg-minutt-for-minutt グリーグはノルウェーの民俗音楽から影響を受けた作品をたくさん残したということが知られています。もちろん、彼のインスピレーションの源となったのは豊かな大自然とか、ドイツ風クラシックの伝統というものもありますが、実際に仲間内と出かけた田舎で出会った少女から習った曲だとか、お気に入りのハーディングフェーレプレーヤーとの交友録みたいなものがあったりもします。実際にハーディングフェーレの曲は作曲しなかったものの、そういった経験から、ノルウェー民俗音楽からのエッセンスが満載の作品が残されています。晩年の大作には、Knut Dahleのレパートリーをピアノ曲に仕立てたOp.72 Slåtterがあります。 このGrieg minutt for minuttシリーズではハーディングフェーレが2回登場しました。一度目は有名なペールギュントOp.23、そしてOp.72 slåtterです。演奏を担当したのはHåkon HøgemoとNils Økland。2人とも私の大尊敬するプレーヤーです。 後になって落ち着いて映像を見直して、その演出の面白さを改めて感じています。特に、Op.72の方では、演奏者はシンプルな服装でありながら、聴衆にはなんと80人を超える民族衣装を着た人たち。実はNRKとトロールハウゲンは協力して、この作品の録画に衣装を着て参加してくれる市民を募ったのです。この作品がいかに、「国民的」なものの象徴であるか、そしてグリーグが、その作品を「名もない」民衆の音楽から題材を得て作ったというコンセプトを象徴するような演出だったと思います。あ、ちなみに念のため書いておくと、Op.72の演奏を担当したEinar Steen Nøkleberg (ピアノ)とNils Økland(ハーディングフェーレ)はどちらも大変著名な方で、私が言っているのは「演出が」という意味です。その観点でいうと、Knut Dahle自身もテレマルクの伝統音楽においては決して「名もない」存在ではなかったのですから。(グリーグが1903年に発表したOp.72の前書きにはKnut Dahle のレパートリーから取られたとは書かれず、ただ「テレマルクの年老いた奏者」とだとだけ書かれています。) It was hornour to be able to be at Edvards Grieg's 175 yrears old birthday event "Grieg minutt for minutt". "Grieg minutt for minutt" …

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フィドル弾きまくり

昨日の3月3日、ベルゲンフォークでは恒例のダンスフェストがあり、久し振りにダンスに弾きまくる楽しい夕方でした。 メインはアメリカから来たこちらのバンド、ケージャン、カントリーのグループで、ツアーの一部として昼間はダンスのワークショップ、夕方からコンサートと夜中までダンスという内容でした。 その前座として、私の参加しているベルゲンの若手ハーディングフェーレグループ、アウドヒルズが弾き、その後のダンスフェストではケージャンバンドと交代で夜中までダンスの伴奏。写真はコンサートの時の様子です。(注:ケージャンバンドの方です) コンサートの部も楽しかったのですが、私としてはその後のダンスで弾きまくるのが楽しみは大きく。阿波踊りでは「踊る阿呆に見る阿呆」と言いますが、この場合、「踊る阿呆と弾く阿呆」です。踊りまくる人達、弾きまくる人達。その後スッキリ爽快!グループの若き女子たちの多くは、子供の頃からこういうイベントで弾きまくり踊りまくって成長しているので、あれっと気がついたら、途中からダンスに繰り出している女子たち。そして次の瞬間気がついたら背後でケージャンバンドのおじさんが参加している、という終盤はジャムセッション風になり12:00で終了しました。街中らしく、夜中になると終電、終バスの時間を気にして急いで退散。ダンスパーティでアルコールもなく、グダグダもなしです。 こういうイベントでアルコールがないのは意外かもしれませんが、ノルウェーはアルコール規制がきつく、普段からアルコール類を販売していない会場ではわざわざ警察署から許可証を取らなければならず、そういう煩わしさも手伝って、ノンアルのイベントというのが割と多いです。 私はダンスはもともとあまりしないのですが、こういうときは無性に踊りたくなります。昨日はダンスしなかったので、満足度はまあまあです。スッキリ、楽しかった!! アウドヒルズの写真がないって?弾く阿呆状態の時に写真なんか撮る暇ありますか?    

嬉しいニュース!

2月は悲しい出来事の後、風邪をひいたり、なんだか重苦しい気分のまま終盤を迎えた先日の日曜日、嬉しいニュースがあり、一気にテンションが上がりました。 今週の日曜、2月25日、ノルウェーでは昨年一年間 (2017年)に発表された音楽作品(CD)の中からそれぞれの分野でのベストアルバムを選ぶ、スペルマン賞が発表されました。その中で、私が個人的に大変お世話になったり、音楽をする上でとても影響を受けている方が2組も受賞したのです。 まず、フォーク、伝統音楽の分野では、アンネ・ヒッタ Anne HyttaのストリームールStrimurという作品が選ばれました。Strimurというのは、テレマルクの言葉で「日差し」とか「明かり」を意味します。その通り、テレマルクの伝統曲を収録したハーディングフェーレのソロアルバムです。彼女は間違いなく、私がこれまでに一番影響を受けたプレーヤーの一人です。これまでのレッスンの中で教わった曲も、それから数年たった今、彼女らしい解釈でさらに発展を遂げているもの、また、有名曲で今まで何度も聞いた事がある曲でも彼女の解釈を通して、瑞々しく昇華されているもの、それらがまた、彼女らしい順番でアルバムとして整理され、提示されている様子。伝統曲を扱いながらもどこにもかしこにもAnne Hyttaスタイルが満載で、独善的ではなくすっきりとその理由づけが見える素晴らしい作品です。 この作品は、昨年、フォークミュージックフェスティバルであるFolkelarmでもベストソロアルバムとして受賞したものです。ある意味特殊で狭い分野の中だけでなく、スペルマン賞のような一般に開かれた場でも大きく評価されました。 そして、オープンクラスでは、ニルス・エクランド バンド Nils Økland BandのリスニングLysningというアルバムが選ばれました。 Nils Øklandといえば、ハーディングフェーレを用いながらも常に新しい表現を探り、実験的であったり即興的な作品を発表し続けるプレーヤーです。ともすると、画一的な理想を追求してしまいがちな伝統音楽という分野にありながら、自由な発想を提示し続ける姿が魅力です。「音色の探求」というのがこの方の音楽の一つのキーワードになると言われています。決して、単に綺麗なだけではなく、時にはタブーとされるような音も臆する事なく出していく、という姿勢。とはいえ、いつ聴いてもその音楽は美しく、甘ったるくはないけどロマンチックで、何かいつも救いがあるような、そういう世界観があります。音楽に限らず日々の生活の中で、「いかに無駄のない〇〇をしようか」とか「完璧でない〇〇はいやだ」とか、何かしら自分で設定しているルールに知らず知らず縛られているという状況。「実験音楽ではその場に起こっていることはそれが全てそれで良いと考える。例えば、ハーモニーが最悪だったとか、音色が汚かったとか、曲の終わりがうまくいかなかったとか。でも、それはそれでOK」というような事を、かつて即興を少し始めようとした時に、Nilsと長年演奏しているSigbjørn Apelandが話していたのを、ことあるごとによく思い出します。 ちょうど、スペルマン賞発表の前日、ベルゲンでこのバンドのコンサートがありました。Nilsのコンサートを聴くのは2年ぶり。美しいところあり、ハードなところあり、バンドのチームワーク抜群のとても良いコンサートで、この日も何処と無くいつもの幸福感がありました。 というわけで、これらの受賞が心から嬉しく、停滞気味な生活に少し活気が戻ってきた今日この頃です。 因みに、スペルマンspelemann/ spillemann/ spellemannとは演奏家とかいう意味ですが、伝統音楽の分野では、ダンスの伴奏に弾いたりする場面で、特に、ハーディングフェーレやフェーレの演奏家に対して日常的に使われる言葉です。現代的には「音楽家」という意味のmusikerも使われますが、伝統音楽ではスペルマンの方が圧倒的によく使われる表現です。

悲しい出来事

つい先日2月4日の日曜日、私がヴォスにいた頃に大変お世話になったLeif Ryggという奏者がお亡くなりになりました。まだ70代半ばとまだまだお元気であってもおかしくない年齢でした。数年前より闘病中との話があり、周囲も覚悟はしていたものの、やはりその存在があまりに大きかっただけにとてもショックです。最後にお会いしたのは去年の10月、今年も機会があればお訪ねできたらいいなあと思っていたところでした。 私が2010年にヴォスのオレブルアカデミーを始めた頃、顔を出した地元のスペレマンスラーグではいつも大きなお父さんのような存在で、曲のわからないところはLeifに聞こう、のような、具体的な指導だけに止まらず、常にその場の空気を明るく和ませるユーモアに溢れ、周囲にはいつも笑いが絶えませんでした。いつも美しさに溢れ、独特の繊細で明るい音色と活発でリズミカルな音楽は、私にとってはヴォスそのものでした。地元での存在の大きさに止まらず、多くのプレーヤーにユーモアと音楽を届けた事がよく知られています。ノルウェーの民俗音楽にとって、かけがえのない存在でした。 http://www.folkemusikk.no/leif-rygg-til-minne/ https://www.youtube.com/watch?v=l0FyIypyvtg

再びノルウェーへ

  すっかり更新が遅れてしまいましたが、1月7日は多くの方が来てくださり、本当にありがとうございました。当日は慌ただしく、会場の写真すら撮れませんでしたが、民家を改修した夢の溢れる空間で演奏させていただきました。大学時代からの友人、北欧音楽好きの方、実際に演奏される方まで、懐かしい再会も多く、楽しい時間でした。 そしてまた、ノルウェーに戻ってきました。今年は気温が例年よりも低いようで、帰ってきた日はベルゲンでは珍しく雪、それから数日間降り続けましたが、今では毎日0度程度です。山の上には冬らしく雪がずっと残っています。予々、ベルゲンの冬は雪がなくて風情がないと不満でしたが、今年はうっすらと冬を感じる毎日です。  

Happy New Year!

2018年明けましておめでとうございます。今年も皆様にとって良い年になりますように。 年末12月20日から大阪に帰省しています。飛行機からの景色。   2018年は大阪天六のスタジオギャラリー、Timeblueでのライブから開始します。残席ごくごく僅少となりました。お越し下さる皆様に再会できますことを楽しみにしています。 本年もどうぞよろしくお願いいたします!